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最高裁判所第三小法廷 昭和41年(オ)539号 判決

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人戸毛亮蔵の上告理由一の第一点および第二点について。

補助参加人のなした控訴の申立が被参加人の意思に反するものであつても、その申立の以前に被参加人が相手方と不控訴の合意をなし、または控訴権を放棄していたなどの事由の認められないかぎり、右控訴の申立は、被参加人の訴訟行為に抵触するものといえず、したがつて、無効とはならないと解するのが相当である。これと同旨に出た原審の判断は正当であつて、原判決に所論の違法はない。論旨は、独自の見解に立つて原判決を非難するものにすぎず、採用することができない。

同上告理由一の第三点および第四点について。

上告人の脱退控訴人との間の奈良地方裁判所宇陀支部昭和三二年(ワ)第三号土地所有権確認請求事件につき同裁判所のなした、所論の確定判決は、その判決の基礎になつた口頭弁論の終結当時本件係争地が上告人の所有に属することを確認したものにすぎないのであつて、右口頭弁論終結時より前にすでに伐採され、その終結の当時には右係争地とは別個独立の動産となつていた本件伐倒木が上告人の所有に属すること、また、右伐倒木の伐採された当時右係争地が上告人の所有に属していたことまでを確認したものではないから、右確定判決は、右伐倒木が上告人の所有に属するか否かを争点としている、上告人と被上告人(脱退控訴人の承継人)との間の本件訴訟の裁判に対しては、既判力その他の拘束力を及ぼすものではないと解すべきである。以上と同旨と解される原審の判断は正当であつて、原判決に所論の違法はない。論旨は、独自の見解にもとづき原判決の違法をいうものにすぎず、採用することができない。

同上告理由二の第一点ないし第五点について。

本件係争地およびその隣接地の権利変動の経過に関する原審の事実認定は、原判決挙示の証拠関係(挙示の証拠のうち甲号証とあるのは、いづれも乙号証の誤記であると認める。)に照らして、首肯することができないわけではない。そして、右事実認定のもとにおいては、右係争地は上告人が訴外亀本から買い受けて所有権を取得した山林の範囲内には含まれていないし、したがつてまた、脱退控訴人が右係争地上において伐採した本件伐倒木も上告人の所有に属するものではない、とした原審の判断は、正当として是認することができる。なお、所論のうち、上告人と脱退控訴人との間の前記確定判決が本件訴訟の裁判に対して拘束力を有するかのように主張する部分が理由のないものであることは、上告理由一の第三点および第四点について判示したとおりである。原判決に所論の違法はなく、論旨は、ひつきよう、原審の適法にした証拠の取捨判断および事実の認定を非難するか、または、独自の見解を主張するものにすぎず、採用することができない。

上告理由二の第六点について。

原判決において第一審判決を取り消し、上告人の本訴請求を全部棄却したことに伴い、民訴法一九八条二項を適用して、上告人に対し、上告人が第一審判決の仮執行の宣言にもとづいて給付を受けた本件売得金の返還等を命じた原審の判断は、正当であつて、原判決に所論の違法はない。なお、本件訴訟における争点は、上告人が本件伐倒木またはそれに代わる右売得金の所有権を有するか否かであつて、被上告人がそれらの所有権を有するか否かではないのであるから、被上告人が右伐倒木または売得金の所有権の取得につき対抗要件を具備したか否かについては、原審において問題にする必要すらなかつたのである。論旨は、独自の見解に立つて原判決の違法をいうものにすぎず、採用することができない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 下村三郎 裁判官 松本正雄 裁判官 関根小郷)

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